東日本大震災1年にあたって、ご報告と感謝の気持ちを申し上げます。
被災地へピアノをとどける会
実行委員長 庄司 美知子
今なぜピアノを動かすのかと、一般的には思われることが多いかもしれませんが、学校生活のなかで、文化祭、合唱祭そして卒業式、入学式と迎えるにあたり、ああ、やはりピアノがほしいという声が増えています。子供たちは寒い東北で外に出る機会も少なくなり、お届けしたピアノを囲んで楽しんでいてくださるようです。
きっと今までピアノや音楽は空気みたいなもので、何となく後ろで流れていたものだったのでしょう。それが今、ピアノが届いて子供たちがピアノに触れ、声を出してうたうことに喜びをもって下さったことは本当にうれしいです。
ピアノをお届けした学校から、お披露目の出前コンサートをしてほしいとおっしゃってくださることもあり、お申し出のあったところには時間を融通して伺うことにしています。出前コンサートでは、初めて本物のコンサートを聞きましたなどと言ってくださったりしました。
本当にひどい状態の被災地にはまだ入れませんが、それでもまだヘドロのにおいがプンプンする学校でのコンサートでは涙が出ました。小さな生徒さんの間では無邪気に笑いが飛び交っていましたが、友人を亡くしたり、生徒が見つからない学校での先生や上級生は、まだまだ気持ちの整理がついていないようにみえます。
私たちの活動は、今はもうピアノをとどけることを通り越して音楽をとどける会になってきたと感じます。今までピアノがなかった場所にもピアノをお届けし始めました。暗くなっている町に音楽を響かせたいという地域の方からの声は、こういう事態になっての心の叫びなのだと思います。一番後になって必要になると思われていた音楽でした。音楽に積極的に関わらないで過ごしてきた方からも、コンサートを開いてほしいとか、音楽を町に流したいとかいうご連絡を頂くと、私たちは頑張らなければとまた力が湧きます。今は、ピアノとともに音楽もお届けしたいという気持ちです。トップクラスの音楽ばかり見つめてきた自分が恥ずかしくなります。音楽は万人のものなのです。もちろんそのためには上も見つめ底辺を広げていかなければ、トップの方を支えるオーディエンスは増えません。いろいろ考えさせられる昨今です。
先週は新聞に報道されたこともあり電話は鳴りっぱなしでした。今月号の「ムジカノーヴァ」(音楽之友社)がこの会のことをとても詳しく扱って下さっています。ご覧いただければと思います。http://www.ongakunotomo.co.jp/magazine/musicanova/
全国からピアノをお届けしたいというお話や、コンサートでこの活動を紹介したいなどのお申し出が増えています。有難いことです。最近になって、岩手から学校が7校も手を挙げてくださいました。でも校舎ができるのはいつになるかとのことです。「2年後にピアノをとどけてください」という被災地からのお申し出もあり、長い長い旅は続きます。
これまでのご協力に心から感謝を申し上げますと同時に、必要なところにきちんとお届けできるまで、更なるお力添えをお願いいたします。